TINY SOUND MODULE(TSM)

MSX用にYAMAHAから発売されたFMサウンドシンセサイザーユニット SFG-01は、 YM2151(OPM)という素晴らしい音源を搭載していたものの、YAMAHAのサイドスロット専用という形状や、価格が高めだったこともあって、一般ユーザーが気軽に購入できるオプションではありませんでした。
また、対応アプリケーションも、YAMAHAが独自に開発したものがほとんどで、内部資料も少なく、ユーザーが「こんなソフトがあったらいいのに…」と思っても、自分で開発するにはかなりハードルが高かったと思います。

しかし、今ならそんなことはありません。

オークションを探せば、そこそこの金額で実物を手に入れることができますし、情報はネットを探せばあります。

欲しいソフトがなければ自分で作れば良いのです。

というわけで、SFG-01（SFG-05）を、簡易的なMIDI音源モジュールとして使うツールを作ってみました。

ダウンロード

【DownLoad】TSM.zip 2018.1.26

概要

MSXとSFG-01(SFG-05)を、MIDI音源モジュールとして使うツールです。
SFG-01(SFG-05)のMIDI-INから入力された信号を解析して、SFG内蔵のサウンドチップOPM(YM2151)を鳴らします。
OPMの音色は、すべてメモリ上から読み込むので、BLOADファイルとして保存しておくこともできますし、BASICのデータ文として定義することもできます。また、音色データのフォーマットはX68000のM_VSETコマンドと互換性があるので、ベーマガ等に掲載されていたX68000用のサウンドプログラムのものが使えます。

起動方法

RAM32KB以上のMSXに、SFG-01またはSFG-05をセットしてください。
MSXを起動し、BASIC画面で以下の１行を入力してください。
CLEAR100,&HB000:BLOAD"CAS:"
添付のTAPEフォルダ内にある tsm_bin.wav（環境が良いのであれば、倍速の tsm_bin_2400.wav が速くておすすめです）をPCやICレコーダーで再生してください。（あるいは、事前にカセットテープにダビングしておいてください）
"Found:TSMBIN" の後に "Ok" が表示されれば、TSM本体のロードは完了です。
BASIC画面で以下のように入力するとTSMが起動します。
DEFUSR=&HB000:A=USR(0)

音色データについて

TSM本体には、矩形波の音色データが１つ入っているだけなので、それ以外の音色を使う場合は、自分で音色データを定義する必要があります。
TSMは、メインRAMのD000Hからを音色用メモリとして使用していて、あらかじめそこにユーザーがデータを書き込んでおくことで、任意の音色を使用できるようになります。
サンプルとして、いくつかの音色データを集めたBASICプログラムを添付しておきました。TAPEフォルダ内にある tsm_vce.wav（tsm_vce_2400.wav）がそのファイルです。
TSMのメインプログラムをBLOADした後、サンプルプログラムをCLOAD、RUNすると、いくつかの音色データを音色用メモリに書き込んでから、自動的にTSMを起動します。

自作の音色を設定したい場合は、このサンプルプログラムを参考にしてみてください。DISKフォルダ以下にソースもあります。

10 'TSM VOICE DATA WRITER
20 AD=&HD000
30 READ A$:IF A$="END" THEN 60
40 FOR I=0 TO 7:POKE AD+I,ASC(MID$(A$+STRING$(8," "),I+1,1)):NEXT
50 FOR I=8 TO 62:READ A:POKE AD+I,A:NEXT:AD=AD+64:GOTO 30
60 POKE AD,0
70 DEFUSR=&HB000:A=USR(0)
80 END
90 'VOICE DATA ---------------
100 '
110 DATA"BRASS 1"
120 '   AF OM WF SY SPPMDAMDPMSAMSPANO
130 DATA58,15, 2,0,200,30, 0, 2, 0,3,0
140 '   AR DR SR RR SL OL KS ML D1D2AM
150 DATA13, 6, 2, 8, 1,30, 2, 1, 0,0,0
160 DATA15, 8, 0, 8, 1,45, 1, 3, 2,0,0
170 DATA21,14, 0, 8, 2,36, 0, 1, 0,0,0
180 DATA18, 3, 0, 8, 2,14, 1, 1, 1,0,1
9980 '
9990 DATA"END"

画面の説明

入出力切り替え

INPUT…現在の入力ソースです。MIDI-INからの外部入力以外に、MSX本体のキーボードにも対応しています。
OMNI…ONの場合、MIDI入力のすべてのチャンネルを区別なく受信し、OPMを同一音色の8音ポリフォニックで鳴らします。 OFFの場合、MIDI入力のチャンネル別にOPMのチャンネルを割り当て、それぞれ設定された音色と発音数で鳴らします。

トラック別設定

PROGRAM…音色です。使用したい音色は、TSM起動前に音色用メモリ(D000H-)にデータを書いておく必要があります。また、PCマークが付いているトラックは、外部入力によるプログラムチェンジ（音色変更）が有効となります。
CH…受信するMIDIチャンネルです。（複数のトラックに同一のMIDIチャンネルを指定した場合、動作は保証されません）
SD…最大発音数です。すべてのトラックの合計が8音以下になるようにしてください。
KEY ON…使用中のOPMチャンネルにマークが付きます。

キーボード

現在発音中の鍵盤にマークが表示されます。マークの色はトラックの色と同じです。スプライトを使用しているので、5音以上同時に発音するとマークが表示されない場合があります(^_^;)

操作説明

[SELECT]…入力ソースを切り替えます。
[TAB]…OMNI ON/OFFの切り替えを行います。
[HOME]…OPMのすべての発音を停止し、SFG-01をリセットします。
[←→↑↓]…カーソルを移動します。
[INS]…カーソル位置のパラメータを+1します。
[DEL]…カーソル位置のパラメータを-1します。
[BS]…カーソルのあるトラックに対して、プログラムチェンジの有効・無効を切り替えます。
[SPACE]…MSX本体のキーボードで演奏する際のオクターブを+1します。
[GRAPH]…MSX本体のキーボードで演奏する際のオクターブを-1します。
[Z][S][X][D][C][V][G][B][H][N][J][M][,][L][.][;][/][_]…MSX本体のキーボードで演奏する際に使用します。
[RETURN]…HELPを表示します。
[ESC]…BASICに戻ります。

音色データのフォーマット

voice name の1バイト目が 0 の場合、その直前が最後の音色データとみなされます。

基本データ

offset	略称	範囲	説明
+0000 : +0007		英数字	voice name （先頭バイトが0の場合 end mark）
+0008	AF	0-63	feedback/algorithm
+0009	OM	0-15	operator mask（TSMでは無視されます）
+000A	WF	0-3	LFO wave form
+000B	SY	0-1	sync LFO at key-on
+000C	SP	0-255	LFO frequency
+000D	PMD	0-127	PMD depth
+000E	AMD	0-7	AMD depth
+000F	PMS	0-3	PMS
+0010	AMS	0-3	AMS
+0011	PA	0-3	stereo LR output
+0012	NO	0-31	noise frequency

オペレータ別データ

offset OP1	offset OP2	offset OP3	offset OP4	略称	範囲	説明
+0013	+001E	+0029	+0034	AR	0-31	attack rate
+0014	+001F	+002A	+0035	DR	0-31	decay rate(1st decay rate)
+0015	+0020	+002B	+0036	SR	0-31	sustain rate(2nd decay rate)
+0016	+0021	+002C	+0037	RR	0-15	release rate
+0017	+0022	+002D	+0038	SL	0-15	sustain level(1st decay level)
+0018	+0023	+002E	+0039	OL	0-127	original level
+0019	+0024	+002F	+003A	KS	0-3	key scaling
+001A	+0025	+0030	+003B	ML	0-15	multiple
+001B	+0026	+0031	+003C	D1	0-7	detune 1
+001C	+0027	+0032	+003D	D2	0-3	detune 2
+001D	+0028	+0033	+003E	AM	0-1	AMS enable

ダミーデータ

offset	範囲	説明
+003F	any	dummy

その他いろいろ

あくまでも「TINY」なサウンドモジュールなので、全てのMIDIメッセージには対応していません。有効なメッセージは、ノートON、ノートOFF、プログラムチェンジ、一部のモードメッセージ（リセット、オールノートオフ系）のみになります。ベロシティーも無効です。
プログラムチェンジは、OPMの多くのレジスタを書き換えるため、処理に非常に時間がかかります。その後に続くMIDIメッセージを取りこぼしたりするので、演奏中に切り替えるのはやめたほうが良いと思います。
見ていて楽しくなるように、描画にそれなりにコストをかけていることもあって、MSXの処理速度的には余裕がなく、あまり激しいデータは正しく演奏できないかもしれません。
演奏中に音色やチャンネルを切り替えると、正しく演奏されず、音が鳴りっぱなしになることがあります。そんなときには[HOME]を押してください。
TSM実行中に[ESC]を押すとBASICに戻り、A=USR(0)ですぐにTSMを再起動できます。BASICプログラムエリアは完全に保護されるので、自作の音色設定プログラムなどからTSMを起動することもできます。
TSM本体のプログラムは、B000H-C865Hに置かれます。
音色0を書き換えたい場合、TSM本体をBLOADした後、一度 POKE &HB60E,&HC9 を行ってから、CFC0-CFFF（音色1の直前）に音色データを書いてください。
BASICで音色データを編集する場合、SCREEN 0:WIDTH 40だとギリギリ改行されないので良いかもしれません。